大家の会計ソフト、freee・マネーフォワードじゃなく弥生にした理由——法人1期目を税理士なしで回した僕の記録
結論
僕は資産保有法人の会計に、弥生会計(記帳)と全力法人税(法人税申告書の作成)を選びました。freee会計とマネーフォワードクラウド会計もそれぞれ1ヶ月ほど無料トライアルで使いましたが、本番の記帳・決算・申告には使っていません。決め手になったのは、複式簿記への対応力がある妻の希望を優先したこと、初年度無料キャンペーンで初期コストを抑えられたこと、そして税理士事務所での導入実績が多いという当時の情報をもとに弥生を選んでおけば将来の税理士連携で困りにくいと判断したことです(導入実績の数値的な裏付けは取れていません)。1期目の決算・申告は税理士に頼らず、弥生会計と全力法人税の組み合わせで自分たちで完結させました。
僕の状況
会社員をしながら資産保有法人を設立し、アパート2棟を法人名義で保有・運営しています。決算期は8月末に設定し、1期目(設立〜翌年8月末)の決算作業を2024年9月から10月にかけて自分で行いました。税理士とは契約せず、日々の記帳から決算書(貸借対照表・損益計算書)の作成、法人税の申告書作成までを、妻と分担しながら進めています(消費税は後述のとおり1期目は免税事業者と判定し、申告していません)。
1期目の法人の取引は、家賃収入、管理会社への委託料、ローンの元利返済、固定資産(建物)の減価償却が中心で、仕訳の件数は月10〜20件程度でした。取引の種類が少なく金額も安定しているという点は、一般的な事業法人とは違う不動産賃貸業ならではの前提だと思います。
会計ソフトは設立準備の段階でfreee会計とマネーフォワードクラウド会計の両方を無料トライアルで申し込み、2023年9月から1ヶ月ほど並行して使いました。ただし、この2つは比較検討の段階で終わっていて、本番の記帳・決算・申告に使ったのは弥生会計と全力法人税です。選ばなかった理由・選んだ理由は次の章にまとめます。消費税については、法人1期目は原則として基準期間がなく免税事業者になる(資本金の額などの例外要件に該当する場合や、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をした場合を除きます)ため、この判定を自分で確認したうえで、消費税の申告は不要と結論づけています(判定の根拠は国税庁タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」を参照。要件は法人ごとに異なるため、実際の判定は必ず所轄税務署または税理士に確認してください)。
比較したもの
freee・マネーフォワードを1ヶ月トライアルして感じたこと
不動産賃貸業を営む一人法人という前提で、実際に触って比較した項目をまとめました。料金は本番契約に至っていないため、この記事では省略します(契約前に必ず公式サイトで最新の料金を確認してください)。以下はいずれも2023年9月時点・約1ヶ月のトライアルでの所感です。両サービスとも仕様は継続的に更新されているため、現在の仕様は各公式サイトで確認してください。
| 項目 | freee会計 | マネーフォワードクラウド会計 |
|---|---|---|
| 入力方式 | 質問形式のガイド入力で、簿記の知識がなくても迷いにくい設計 | 一定の複式簿記の知識を前提にした入力画面 |
| データ形式 | 独自フォーマットで、他ソフトや税理士との今後の連携が取りづらいと感じた | 標準的な複式簿記の形式に近く、汎用性を感じた |
| 妻の評価 | 直感的だが、複式簿記に抵抗のない妻には物足りなさがあった | 妻も違和感なく操作できたが、簿記の基礎知識がある程度必要 |
freeeは初心者が迷わないように作られているぶん、仕訳データの持ち方が独自寄りで、将来的に税理士に決算を依頼するときに連携で手間が増えないかが気になりました。マネーフォワードは標準的な複式簿記に近く扱いやすかった一方、簿記の基礎知識がない状態で使うと戸惑う場面もありそうな設計でした。うちは複式簿記の記帳を妻が担当できたので、この2つのうちどちらを選んでも運用自体は回せたと思います。
弥生会計・全力法人税を選んだ決め手
最終的にはマネーフォワードと弥生会計の2つで最後まで悩みました。決め手になったのは次の4つです。
- 複式簿記に対応できる妻の希望を優先した。 freeeの質問形式ガイドは不要で、標準的な複式簿記の入力画面のほうが妻には合っていました。
- 初年度無料キャンペーンで初期コストを抑えられた。 契約時点(2023年9月)で弥生に初年度無料のキャンペーンがあり、法人1期目のコストを抑えられました。このキャンペーンは2023年9月時点のもので、現在は内容が変更されている可能性があります。最新の料金・キャンペーンは公式サイトで確認してください。
- 税理士事務所での導入実績が多いという情報を判断材料にした。 僕がソフトを選んだ2023年当時、税理士事務所での導入実績が多いソフトだという情報を複数見かけ、それを判断材料にしました(数値の裏付けは取れていません)。同じ2023年に税理士を探す過程で、クラウド会計そのものに対応していない事務所があり、マネーフォワードでの記帳データ連携を前提とした依頼を断られたことがありました(ソフト側の問題ではなく、事務所側の対応状況によるものです)。将来的に税理士へ依頼する可能性を考えると、対応してもらいやすいソフトを選んでおきたいと考えました。
- 全力法人税との親和性が高かった。 記帳を弥生会計で行い、法人税申告書の作成を全力法人税で行う組み合わせは相性がよく、税理士なしで申告書まで作る前提に合っていました。
法人設立の手続き自体も弥生のオンライン会社設立サービスを使っていたので、会計ソフトも同じ弥生ブランドでそろえる形になった、という側面もあります。
固定資産・減価償却の扱い
1期目で建物の減価償却を初めて計上する必要がありました。建物本体は、売買契約時に契約書に記載された価格をもとに減価償却しています。土地と建物の按分の詳細な考え方はこの記事では割愛します。
また、1期目は設備・構築物などの償却資産に該当する資産がなかったため、償却資産税の申告は不要でした。該当の有無は資産の内容によって変わるため、この判断も税理士を通さず、市区町村の窓口で確認しています。
うちの1期目(仕訳件数 月10〜20件)の場合、決算書作成にかかった延べ時間は、記帳の見直しも含めておよそ20時間でした。件数や取引の種類によって大きく変わると思います。
判断基準
freee・マネーフォワード・弥生を比較する中で立てた基準は次の3つです。
- 記帳を分担する相手の簿記知識に合わせてソフトを選ぶ。 複式簿記に抵抗がないなら、質問形式のガイド入力よりも、標準的な複式簿記の形式に近いソフトのほうが、後の税理士連携やデータの汎用性で選択肢が広がります。
- 将来的に税理士へ依頼する可能性があるなら、税理士事務所での導入実績を判断材料にする。 クラウド会計に未対応の事務所に断られた経験があるように、「クラウド対応かどうか」よりも「どのソフトが税理士事務所で多く使われていそうか」のほうが、税理士探しの手間を減らせると感じました。
- 申告書までソフト単体で完結すると思わない。 記帳ソフトでの決算書作成と、法人税申告書の作成は別工程になることが多いです。税理士なしで進めるなら、記帳ソフトと申告書作成ソフトの組み合わせ(うちの場合は弥生会計+全力法人税)を契約前に確認しておくと、決算月になって慌てずに済みます。
法人の取引内容や規模、記帳を担当する人の簿記知識によって最適な組み合わせは変わります。この基準は、あくまで一人法人・不動産賃貸業・仕訳件数が月10〜20件という僕の条件での判断材料としてお使いください。
使ったサービス
- 弥生会計(法人向け)/記帳に使用
- 全力法人税/法人税申告書の作成に使用